久保清隆のブログ

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初歩的だけど、意外に役立つ経済学入門 〜経済学の基礎を学んで賢く生きよう

ビジネスパーソンとして経済学を学ぶことは、非常に重要だと思う。
営業マンだけでなく、プログラマーもデザイナーも経済学を学んで、ビジネスのわかるクリエイティブになった方が考える視野が広がってより楽しく仕事をできるし、状況判断、決断をする際の助けにもなり成果につながると思う。
ということで、NHKの番組で紹介されていた役立ちそうな経済学の用語をまとめた。
サンクコスト、機会費用比較優位、インセンティブ、モラルハザード逆選択、価格差別、裁定、囚人のジレンマ共有地の悲劇、割引現在価値、ネットワーク外部性の12個。ちゃんと理解できていないものは理解しておいた方がよい。この中でも、機会費用とインセンティブは応用が効くので特に重要。
上記の用語は、本当に基本的な用語だけど、その概念を理解して自分の頭にインプットしておけば、主にビジネスで、たまにプライベートでも、より良い判断に導いてくれると思う。

用語解説

サンクコスト(Sunk Cost、埋没費用)

「サンクコスト」とは、一度投資して、もう二度と返ってこない費用のこと。
個人も企業も、このサンクコストに縛られ、合理的な判断を見失うことが多い。

  • 具体例:ビジネス編
    • 勝ち目の薄い投資はサンクコスト。「投資した分を取り戻したい」という思いに加え、「自分たちの過ちを認めたくない」という見栄やメンツが、人をサンクコストに縛り付け、合理的な判断を見失わせる大きな要因になる。
  • 具体例:プライベート編
    • 貢ぎ続けた彼女との関係を保つため、さらに貢ぎ続けるべきか?
      • 今まで貢いだ分がもったいないからと言って、彼女へのさらなる投資は明らかにサンクコストに縛られた考え。今まで貢いだ分はサンクコスト。戻ってくることはないから、今後の関係を決断する時に考慮すべきではない。そこに愛がないのならキッパリと清算して新たな出会いを求めた方が合理的。
    • 高級焼肉店に高いお金を払って入会したが、そのお店は値段の割にはおいしくなかった。でもせっかく入会したので無理にそこに通うべきか?
      • 入会金はサンクコスト。元をとろうと無理に焼肉を食べ続けるのは愚の骨頂。さらに不幸なことに、体を壊して余計な医療費を払う羽目になるかもしれない。他のコストパフォーマンスの高いお店を探すべき。
開通させることによって上がる利益が、残りの工費1000億円に達しないならば、工事をやめることである。これまでにかかった工費は、回収できないサンクコストだから、今後のプロジェクト費用を計算するときは考えてはいけないのだ。
機会費用

機会費用」とは、いくつかの選択肢から一つを選ぶ時、選ばれなかった選択肢から得られたはずのメリットをコストとして捉える考え方。

  • 具体例:ビジネス編
    • 仕事上の移動で、タクシーを使った方がバスを使うより一時間早い場合、どちらを利用するべきか?
      • バスとタクシーのどちらが得かを考える時は、その時の自分の機会費用について考えるべき。1時間に何件も得意先を回り確実に成果をあげる社員なら、1時間あたりの機会費用はタクシー代よりも高い(タクシーの方が得)。逆に1時間では大した仕事ができない社員なら機会費用は安く、バスに乗って経費を節減した方が合理的。
    • 居酒屋などでよく見る「激安ランチ」。そんなに安くして損しないのか?
      • 居酒屋の激安ランチは機会費用をうまく活用している。夜に営業する居酒屋は、昼間にその設備や人が遊んでいることが多い。とはいえ、設備や人を他のモノ(ビジネス)に転用するのも難しい。従って、昼間の営業を始める時の設備や人の機会費用は「ゼロ」に等しい。後は材料費と光熱費、そしてわずかな利益を上乗せすることで激安ランチの出来上がり。しかもお昼は客の回転が早く、少ない利益でも充分儲けにつながる可能性が高い。
      • ビジネスの場面では、施設や道具など様々なモノの機会費用も検討すべき。「機会費用」は人の行動だけに限らない。
  • 具体例:プライベート編
    • 残業をサボって彼女とデートをした場合、どのようなコストがかかっているか?
      • その時のデートに使ったお金に加え、残業で得られたはずの給料もコストとしてかかっていると考える。
    • 合コンをドタキャンして先輩に奢ってもらえる飲み会にかかるコストは?
      • 飲み会はタダだけど、この場合「タダ酒」にはならない。合コンで得られたはずの利益(楽しさ、彼女候補)を犠牲にしたことになる。
比較優位

比較優位を持つ、つまり相手より機会費用の少ない財の生産に特化し、他の財は(自由)貿易を通じて輸入することで、それぞれより多くの財を消費できるという国際分業の利益を説明する理論。これは、国際分業だけでなく、日常のシーンでも応用できる。この説明だけではわかりづらいので具体例を。

  • 具体例:ビジネス編
    • 全ての能力においてA君に劣るB君。そんなB君に活躍の場は残されているのか?
      • 比較優位」の考え方をすると希望が見える。
      • 2人で2つの仕事を分業する時、A君のほうがどちらも得意でも、B君が、機会費用(その仕事をすることで犠牲になる仕事量)の小さい仕事に特化し、うまく分業することで全体の生産性が上がる。高い能力を持つA君でも能力の低いB君と効果的に協力することで生産性を高めることができる。
    • アインシュタインが秘書よりタイピングがうまい。アインシュタインはタイプの仕事もすべきか?
      • アインシュタインがタイプするより、秘書がタイプした方が全体としての生産性は上がる。
      • ポイントは誰でも何からの比較優位を持つということ。
  • 注意点
    • ライバル社がレストラン事業から撤退。ライバル社の状態が悪いのかと思いきや、必ずしもそうではない。さらに、不思議なことに、ライバル社の強みではない小さな弁当事業は継続。ライバル社の真意は?
      • 強みのある事業にヒト、カネ、時間などの経営資源を集中するのが「選択と集中」と呼ばれる経営戦略。そんな中、ライバル社が現時点で強みがあるとは言えない小さな弁当事業を継続したのはなぜか?理由は、「比較優位」はあくまで現時点の相対的なものであり、将来、変わる可能性があるから。弁当事業に、画期的な新商品や生産技術を開発できるすることができれば、比較優位は変わる。
    • これは個人も同じ。自分がやりたい仕事に、今は比較優位がなくても、努力を続けることで能力を向上させることができれば、比較優位となることがあり得る。
インセンティブ

「インセンティブ」とは、人にある行動をとらせたり、それをやめさせたりするためのいわば「道具(アメとムチ)」のようなもの。「誘因」とも訳される。インセンティブはビジネスや日常生活の様々な場面で見られる。

  • 具体例:ビジネス編
    • 普段はだらしないB君が、突然整った服装で出勤するようになった。その理由は?
      • 理由は、受付嬢が最近凄くきれいな人に変わったこと。彼女に少しでもよく見られたいという一心でB君は身だしなみを整えるようになった。しかしその裏には、「社員の身だしなみを正したい」という会社上層部の思惑があった。
      • 自主的に身だしなみに気を配っているつもりのB君も、会社側から受付嬢というインセンティブを使って操られている。
    • 一番分かりやすいのが「お金」。会社が給料のアップなどで社員のやる気を引き出そうとしているのはご存じの通り。
    • 厳しい刑罰(罰金)が飲酒運転の抑止につながるなど、「罰則」もまたインセンティブになり得る。
    • 会社から新たなプロジェクトの出店候補地として空き店舗を探すように言われ、首をひねるB君。というのも、店舗の売り上げによって家賃が変動する「歩合家賃」で、と条件を出されていたからだ。どう考えても家賃が一定の「固定家賃」の方が得だと考えるB君だが、実際どうなのか?
      • 店舗の売り上げがあがれば、大家さんの家賃収入もあがるのが歩合家賃。ならば、大家さんには「テナントとして入る店を応援しよう」というインセンティブが働くはず。つまり、ビルにより多くの客が集まるよう、イベントを開催してみたりビルそのものをお洒落に改装したりといった行動が期待できる。会社の上層部が「歩合家賃の物件」にこだわる理由はそこにある。
ヤバい経済学によると人の行動を変えるインセンティブには3種類ある。
・経済的インセンティブ
 お金。罰金やボーナスなど。
・社会的インセンティブ
 周囲の人の評価を利用したもの。皆勤賞、MVPなど。
・道徳的インセンティブ
 道徳心を利用したもの。友達のために力を尽くす、他の人に迷惑をかけない、など。
残業を減らすインセンティブの実践
モラルハザード

経済学では「モラルハザード」を、道徳や倫理感の欠如ではなく、他人の行動を観察することができないことから起きる問題と考える。

  • 具体例:ビジネス編
    • A君が担当するアンケートによる市場調査。ところが依頼したアルバイト君たちにやる気がなく、アンケートもほとんど集まらない状況が続いていた。見かねたB君は、アルバイト君がやる気を出すために給料を「時給制」から回収枚数に応じて支払う「歩合制」にすればよいとアドバイスするが、これはうまくいくのか?
      • 例えば、ある経営者が部下に仕事を依頼した時、従業員の仕事ぶりを観察できず、しかもその仕事の成果を客観的に評価するのが難しい場合、従業員は「努力せず最低限の給料をもらっていた方が合理的」と判断し、サボるかもしれない。
      • ではここで、B君が提案するいわゆる「成果主義」の給与システムが全ての問題を解決するかというと、それもまた微妙。「成果の大小」は必ずしも「努力」と一致しないからだ。にも関わらず成果だけを見て相手を評価すると、他人の成果を自分の成果だとアピールするズルイ社員が得をする。そして、真面目な社員は嫌になって会社を辞めていくかもしれない。モラルハザードは解決が難しい問題。
    • 会社で一人ため息をつくC課長。取引先からの納品にまたミスが見つかったのだという。創業以来のつきあいで、きちっとした仕事で定評があったはずの取引先。しかし、最近は杜撰な仕事ぶりが気になる。それでも、「長いつきあいもあることだし、これまで通り付き合いを続ける方が良い」とクレームを伝える気がない。これでいいのか?どういう対応をすべきか?
      • 実際に老舗の料亭やメーカーで相次いだ食品偽装などの「モラルハザード」。これを未然に防ぐカギは、実は、常連である消費者(取引相手)の行動にもある。例えば、老舗の看板を信じ、消費者が何も考えずにその店を利用し続けた場合、老舗には次第に「良い仕事をしよう」という気運が生まれにくくなる。良い商品を作っても、手を抜いて作っても、そのことを客は観察できず売り上げも変わらないからだ。
      • ここで消費者は、老舗がやる気を維持するためのきっかけ(インセンティブ)を与えることが重要。例えば品質やサービスが落ちた場合、クレームを付けたり利用するのをやめる。これにより老舗には「良いモノを作り続けなければ売れなくなる」という緊張感が生まれ、結果的にその看板が守られる。そう考えると、C課長がとるべき行動は、はっきりとクレームを言うことになる。
逆選択

逆選択」とは、正確な情報が人々に共有されないため、次第にひどい欠陥商品ばかりが市場に出回るようになること

  • 具体例:ビジネス編
    • ひと昔前のアメリカの中古車市場。ここには売り手と買い手の間に情報の格差(情報の非対象性)が存在した。つまり、売り手はエンジンの状態など車の品質をよく理解しているが、買い手は、車の外見以外、詳しい品質を知ることができない。悪意を持った売り手は、状態の悪い車をなるべく高く売ろうとするし、無知な買い手は疑心暗鬼になってどんなに良い車でも安く買い叩こうとする。こうした状態では、仮に良心的な売り手がいても、質の高い中古車を市場に出そうとはしなくなる。そして市場はどんどん衰退していく。
  • 具体例:プライベート編
    • 熱心に携帯の画面を見つめるA君。不審に思ったB君は、それが「出会い系サイト」と見破る。「社会勉強の一環」と弁解するA君にB君は、トラブルが多いから気をつけろと諭す。今度は、そのB君あてに「大学の先輩」と名乗る男から突然電話がかかってくる。投資アドバイザーと名乗るその男は「必ず儲かるから」と、東南アジアでのタラバガニの養殖事業への投資を紹介。それを聞いたB君は俄然乗り気になるが、本当に儲かるのか?
      • 当初は普通の男女の出会いの場として始まったといわれる「出会い系サイト」も、まさに、逆選択が起きることで悪質な利用者ばかりが目立つようになってしまった典型的なケース。また、B君が受けた怪しげな「儲け話」も、逆選択が起きているがゆえに誘う側は無差別に電話をかけてくる、ということも考えられる。


逆選択」を避けるため、売り手が買い手に対して、商品の質の高さを訴え、発信する情報を「シグナル」という。

  • 具体例:ビジネス編
    • 新品の家電製品などでみられる一定期間無料の「修理保証」。これは、もし仮にメーカーが大量に欠陥商品を売ってしまえば、それを全て無料保証しなければならず大損害を被ってしまう。つまり「無料保証」をうたうことは、メーカーが「自分たちが損をしないためにも質の高い商品しか売りません」というシグナルを発信していることになる。
    • 新入社員の採用面接の季節がやってきた。今年はなぜか若手のB君とA君も面接官として採用に当たることに。というのも「より優秀で個性的な人材を発掘せよ」という社長のツルの一声がきっかけだった。しかも応募してくる人の学歴は「一切問わない」という条件まで提示していた。どんな人たちがやって来るのか?本当に優秀で個性的な人材は確保できるのか?
      • 「学歴」もまた、就職を希望する学生にとっては大切なシグナル。もちろん採用する企業も学歴だけで、その学生の持つ能力や人間性を判断はしない。しかし、少なくともそこからは、「厳しい受験戦争をコツコツ勉強することで乗り越えてきた」という真面目さや努力できるといった資質は読みとることができる。企業がそれほどコストをかけず大まかな選別を行うには、やはり学歴は有効なシグナルといえるかもしれない。
逆選択の解消法
①自己選択メカニズム(スクリーニング)
情報を持つ側に、自ら情報を開示するように仕向ける仕組みのこと。
例:保険会社は顧客の健康状態が分かりません。そこで、商品を2つ開発したとします。1つは、保険料が高額だがすべてをカバーする商品、もう1つは保険料が安いが一部を自己負担しなければならない商品。これを顧客に選択させることで、本人しか分からない健康状態という情報を保険会社は引き出すことができます。
②標準化
チェーン店化などによる品質・サービスの標準化を図ることです。よく分からない怪しいお店で食事するよりも無難にチェーン店で食事を済ませた経験は誰でもあるはずです。
シグナリング
情報を持っている主体が、持っていない主体に対し、自ら情報を伝えようとすること。  例:商品・製品の長期保証 →長期保証するくらいだから壊れにくいと判断される
④政府の規制
情報開示の義務付けや製造物責任法など、国の施策が情報の非対称性を軽減させます。
⑤第三者の加入
格付け機関、情報誌(例えば車ならgooなどの雑誌)、ディーラーなど。情報の非対称を解する役割を果たします。
価格差別

「価格差別」とは、高く買ってくれる人には高く、安くしなければ買わない人には安く売る、企業の戦略

  • 具体例:ビジネス編
    • オフィスでため息をつくA君。社会人になり、ランチで学割がきかないことがショックだった。給料をもらっているからとはいえ、自分よりもお金持ちに見える老夫婦がシニア割引をうけているのをみるとすっきりしない。さらに、ファーストフード店では、同じチェーン店なのに地元よりも値段が高い。納得いかないA君。なぜ東京のサラリーマンに割引はないのか?
      • 企業は、都会と地方、あるいは学生・シニア・サラリーマンなどのグループに分けて価格を変えることがある。これを「グループ別の価格差別」と言う。企業は、グループごとに価格に敏感かどうかを判断している。東京のサラリーマンの場合、忙しいため、価格に敏感になり得ないと考えられる。そのため、企業にすれば割引を行う必要がない。これがサラリーマン割引がない理由である。
  • 具体例:プライベート編
    • 携帯電話の料金プランを変更しようかと考えながら、面倒だと投げ出すA君。その横で、B君は赤字続きのスーパーの再建案を検討中。そのアイデアとは、「クーポン券」。それを聞いたA君は、持ち歩かない、店にしてもコストがかかるだけ損、それなら値引きのほうがいいと主張する。はたして、クーポン券には何も意味がないのか?
      • 企業からみれば、手間を惜しまず、クーポン券を利用する人は「価格に敏感な人」、手間を惜しんでクーポン券を利用しない人は「価格に鈍感な人」と考えられる。つまり、価格に敏感であるかどうか、企業がグループ分けするのではなく、消費者自らが分かれる。これを「自己選択型の価格差別」と言う。いわば手間を惜しむか惜しまないかで見分ける巧妙な価格差別。携帯電話の複雑な料金プランもその一つと考えられる。
      • 時間とともに値下がりする映画のDVDソフトや、期間限定のバーゲンセールも同様の「自己選択型の価格差別」である。価格に敏感な人は値下がりするまで待つし、期間限定のバーゲンセールを狙ってくる。
裁定

「裁定」とは、同一時点で価格差がある時、安く買って高く売ること。いわば、確実に儲かる方法である

  • 具体例:プライベート編
    • A君は、Dさんに頼まれていた中古DVDを100円で譲った。すると、Dさんはすぐに、2000円で欲しがっていたEさんに転売。それを見て納得がいかないのがA君。Dさんの行いはサイテーなのか?
      • Dさんの行為はまさに裁定。A君もEさんも、Dさんのおかげで、自分たちが売りたい価格と買いたい価格で取引できた。だから、裁定は全員の満足を高めている。裁定は最低な行いではない。


「裁定」が働くと、価格差は縮小を続け、ついには同じになる。同じモノやサービスは同じ価格であることを、経済学では「一物一価の法則」と呼ぶが、その裏には裁定の働きがある。
(なお、異なる時点の価格差に期待する取引「投機」とは異なることに注意する。)
しかし、実際には場所や時間によって価格が異なる。その原因は、取引コスト。取引コストが高いほど、価格は高くなる。

  • 具体例
    • ライバル店の近くに出店すべきかどうかで悩むB君。そんなB君に、A君がふともらした疑問は、「同じお茶のペットボトルが、駅前のコンビニと郊外のスーパーで異なる値段で売られていること」。それを聞いたB君は、新たなビジネスチャンスを見つけたと舞い上がる。B君の計画はうまくいくのか?そもそも、なぜ、同じお茶のペットボトルの値段が異なっているのか?
      • 「裁定」が働くと、同じモノは同じ価格になるはず。しかし、現実の世の中ではそうならないことがある。その理由が「取引コスト」。商品を運ぶ費用や時間、あるいは買いに行く手間などのコストである。取引コストもあわせて考えると、価格が同じになるところまで裁定は働かない。スーパーとコンビニでは、スーパーの方が取引コストが低いため、安く買える。
裁定取引とは、同一価値のものが地域によって異なる値段が付く場合に、その価格差を利用して転売することで利益を上げる投資手法のこと。
囚人のジレンマ

囚人のジレンマ」とは、個々にとって最良の選択が、全体にとって最良の選択とはならない状況のこと

  • 具体例:ビジネス編
    • あるデパートで新たに「花見弁当」を展開しようというA君。しかし、ライバル社も同じく花見弁当を展開する計画を立てている。このままでは、値下げ競争に陥る。そんな中、ライバル社はA君に対し「末永いおつきあいのほどを」と告げた。ライバル社の真意は?A君のとるべき戦略は?
      • 1回限りの囚人のジレンマにおいては、お互い裏切りあうというのが答え。しかし、それが際限なく繰り返される場合(「繰り返し囚人のジレンマ」)、話は別。裏切らずに協調する可能性が生まれる。そして、その協調を実現するのに有効なのが「しっぺ返し戦略」。まずは協調でのぞみ、後は前回相手がとった行動をとるというもの。相手にしてみれば、裏切れば裏切り返されるので協調したほうが得、ということになる。

ライバル社の「末永いおつきあいのほどを」は、「繰り返し囚人のジレンマ」だから、値下げをしない協調を誘っていると見ることもできる。ならば、まず「しっぺ返し戦略」でのぞむのがA君にとって有効な戦略と言える。

  • 具体例:プライベート編
    • 憧れの女性の初舞台に、花を贈るべきか思い悩むB君。実は彼には恋のライバルがいた。双子の兄。お互いに「花を贈るのはやめよう」と協定を結んだが、兄が協定を守るか信用できない。裏切るべきか否か?
      • B君にしてみれば、兄が協定を守り、花を贈らない場合、自ら協定を破って花を贈れば、女性の心をつかめるかもしれない。反対に、兄が協定を破り、花を贈る場合、協定を守っていては、兄だけが花を贈ることになり、女性の心を奪われてしまうかもしれない。協定を破って花を贈れば、女性の心を奪われることはない。しかし、花の代金は無駄になる。つまり、B君にしてみれば、兄が協定を守ろうと守るまいと、自らは協定を破って花を贈るのが得ということになる。しかし、これは兄にとっても同じこと。そこで二人は協定を破りあい、どちらも女性の心をつかめない一方、花代を失う分だけ、お互いが協定を守る時よりも不幸な結果に終わる。
共有地の悲劇

共有地の悲劇」とは、利用に応じた費用負担を行わないためにおきる過剰利用がもたらす弊害

  • 具体例:ビジネス編
    • 上司や先輩から様々な雑用を、次々と言いつけられるA君。精一杯の抗議をするものの、先輩たちにその声は届かない。このままだとどうなる?
      • A君の場合、上司や先輩にしてみれば、A君に雑用を頼むのは無料。自分が遠慮しても、他の人が頼むのなら、遠慮するだけ損。そこで、我先にと雑用をお願いすることになる。しかし、一定以上の仕事が集中すれば、そのうちA君が仕事をこなせなくなったり、壊れてしまったりする。その結果、A君の働きをあてにしていた上司や先輩たち全員が困ることになる。まさに「共有地の悲劇」である。
    • オフィスがゴミや返品の商品であふれかえったゼニー事業部。あきれた課長の一言で、共有の物置スペースに片づけることに。ところが、その物置スペース、営業部も利用を考えているという。負けじと、必要のないものまで持ち込んで場所確保に走るA君とB君、本当にこれでいいのか?
      • よくない。このままでは、本当に必要な荷物が置けなくなるなど、「共有地の悲劇」が起きる可能性がある。なんらかの対策が必要だ。
    • 地球温暖化などの環境問題も共有地の悲劇の一つ。放っておけば環境問題は解決せず、悪化する一方。そんな中、今注目されているのが、環境を汚す行為に対してかける税金(環境税)と許可証。税金(環境税)は、環境を汚す行為に対し税金をかけることで環境を汚す行為を減らそうというもの。許可証は、環境を汚す行為に一定の許可を与える一方、余った許可分を売買できるようにすることで、より効率的に対策を進められるようにしようというもの。いずれも、鍵はインセンティブにある。
割引現在価値

将来の金額について、金利分を割り引いたものを「割引現在価値」という。

  • 具体例:ビジネス編
    • 新たな事業計画を考えたB君。その計画とは、2000万円投資して10年後に3000万円が返ってくるというもの。「10年で1000万円の利益、採算もばっちりだ」と悦に入るB君だが、この計画は本当に大丈夫か?
      • 大丈夫ではない。現在の1000万円と将来の1000万円は同じではない。その間に発生する金利があるからだ。B君の計画の場合、今の2000万円と10年後の3000万円を単純に比較していることが問題。10年後の3000万円を割引現在価値に直した上で、比較すべき。
  • 具体例:プライベート編
    • 将来に備えて金融商品を検討中のA君が関心を持ったのが「元本確保型変額年金保険」。元本確保」なら損することもなく安心だと、B君と二人ですっかりその気に。元本確保なら安心?本当に損することはないのか?
      • 割引現在価値で考えれば、損することがないとは言えない。仮に、100万円支払って、37年後に元本100万円だけが返ってきた場合、本来、100万円預貯金にまわしていれば得られたはずの利息があるのだから、その分、損をしている。また、物価の影響にも注意する必要がある。将来、物価が上昇すると予想されるならば、その分を割り引いてやる必要がある。元本確保だからといって、安心できるとは限らない。
将来の貨幣価値は現在の貨幣価値とは異なります。
そのため将来のキャッシュフローを評価する際には、単純に加算するのではなく、現在の価値に換算して考える必要があります。
割引現在価値 = 将来価値 / 利回り^期数
このようにして異時点間の価値を比較することが可能です。

割引現在価値を計算する際に使用する利回りを割引率といいます。
割引率の設定の際には以下のような要素に注意する必要があります。
金利
・物価
・リスク 
ネットワーク外部性

ネットワーク外部性とは、利用者が増えることでメリットが増す性質。それゆえ、人気者はますます人気者になるという特徴がある。

  • 具体例:ビジネス編
    • 最新のゲーム機が欲しいA君。広告を見ると、ソフトが1本無料でつくとあってびっくり。実質の値下げだが、どうやらこの会社、以前も最初は実質値下げをして、あとから値上げをするという販売を行っていた。なぜか?
      • ゲーム機もネットワーク外部性が働く商品の一つ。ネットワーク外部性が働く商品やサービスには、初期のわずかな差が、その後の決定的な差につながるという特徴がある。勝敗は、必ずしも機能の優劣で決まるわけではない(よく知られているのが、VHSとベータの例)。そのため、企業にとっては初期の時点で、少しでも多くの顧客を獲得することが重要。発売当初に値下げをする理由の1つはここにある。
  • 具体例:プライベート編
    • 合コンで全く相手にしてもらえなかったA君。気分を一新しようと、携帯電話を変えようかと思案中。それを見たB君は、女性に人気のH君と一緒にするのがいいとアドバイス。なぜか?
      • なぜなら、人気者のH君に好意を寄せる女性たちの中には、H君と手軽に話せるようにと同じ電話会社にしている人も少なくない。従って、H君と同じ電話会社にすれば、A君はこれまでよりも、電話をかけてもらいやすくなる。B君のアドバイスには一理ある。ただし、それでA君がモテるようになるかどうかは別の話。
外部性(外部効果)とは経済学の用語で、ある経済主体(人や企業など)の意思決定や行動が、取引の当事者ではない第三者の経済主体に対して影響を与えること。
ネットワーク外部性には、直接的効果(直接的ネットワーク外部性)と間接的効果(間接的ネットワーク外部性)がある。

直接的効果とは、電話や電子メールなどのようにネットワークの規模(ユーザー数や端末数など)がそのまま需要者(加入者)にとっての利用価値を左右する効果をいう。

一方、間接的効果とは、コンピュータのハードウェアとソフトウェアのように、ネットワークの規模(ハードウェアの普及度など)に応じてその製品の使用価値に直接関係する補完財(ソフトウェア)の提供される量や質が決定され、そうした補完財の存在が需要者(消費者)にとっての製品(ハードウェア)の価値を左右するといった効果をいう。

参考書籍

マンガでわかる! 出社が楽しい経済学 (別冊宝島 1606 スタディー)

マンガでわかる! 出社が楽しい経済学 (別冊宝島 1606 スタディー)

マンガ版。僕はこれを読んでいいなと思ったけど、amazonのレビューでは、テレビの放送の方が評判がよさそう。テレビを見ていないのでなんとも言えないけど。
ただ、テレビは30分×12回で結構時間がかかるので、さらっと勉強したい人にはマンガの方がお薦め。1時間くらいで読める。

出社が楽しい経済学

出社が楽しい経済学

こっちは普通の書籍。



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