新しい体験をしようと思い、広尾にあるお寺(香林院)で座禅体験をしてきた。
香林院は東京で座禅体験をできる貴重なお寺で、AKB48のメンバーが2週間通ったり、その他有名人も来たことがあるとのこと。
座禅は、ストレス社会を生き抜く力を手に入れるために有効な方法だと思う。
また、最近では、女子力を高めるため、OLの朝座禅も流行っているらしい。
座禅に関して、今回訪ねたお寺で詳しく学べたので、座禅をする前に知っておきたいこと、座禅の効用と方法、都内で座禅をできるお寺、そして最後に香林院での座禅体験の感想をまとめた。
座禅の効果・効用
以下のような精神的な効果・効用がある。- 心が落ち着く
- 安らぎが得られる
- 集中力を鍛えられる
- ストレスが解消できる
- ストレスを生み出さなくなる。
座禅をする前に知っておきたいこと
十牛図
座禅を始めても、自分がどう変わっていくかイメージがわかないかもしれないので、十牛図を最初に知っておくとよいと思う。
十牛図とは、禅の悟りにいたる道筋を牛を主題とした十枚の絵で表したもの。
牛は、「悟り」=「心のゆとり」を表す。
十牛図は、座禅を通して「心のゆとり」を得られるようになるまでの道しるべになる。
十牛図の内容は以下。
- 尋牛(じんぎゅう)
- 牛を捜そうと志すこと。
- 現状に疑問を抱く。第一歩を踏み出した状態。
- 「どうして自分はこんなに疲れているのか」「なぜ落ち着かないのか」と問いかける。これが、一歩「心のゆとり」に近づくことになる。
- 見跡(けんせき)
- 牛の足跡を見出すこと。
- 進むべき方向性が見えてきた状態。ただ、本当に自分が進むべき道かどうか迷いも残している。
- 例えば、心の疲れに気づいて、「旅行に行く」などの何らかのアクションを起こす。
- 見牛(けんぎゅう)
- 牛を見つけること。
- 本質には触れたが、まだ自分のものにしていない状態。
- 例えば、旅行をすれば心が落ち着きそうだ、などと気づいた状態。
- 得牛(とくぎゅう)
- 力づくで牛をつかまえること。
- 何とか悟りの実態を得たものの、いまだ自分のものになっていない状態。知識としては得たが、心では理解できていない状態。
- 例えば、座禅をすると心が落ち着く、ということがわかったが、実践すると周囲の音や雑念で、なかなか落ち着かない、という状態。
- 牧牛(ぼくぎゅう)
- 牛をてなづけること。
- 悟りを自分のものにしたが、継続性には不安が残る状態。
- 例えば、座禅を続けることで落ち着きやゆとりの心を手にすることができるようになったが、油断して座禅をやめるとすぐにまた失われてしまう状態。
- 騎牛帰家(きぎゅうきか)
- 牛の背に乗り家へむかうこと。
- 悟りがようやく得られて、日常生活でもあるべき姿でいられる状態。
- 例えば、座禅をすることで得られる心のゆとりを、会社や自宅などの日常生活でも発揮し、落ち着いた状態で問題に対処できる状態。
- 忘牛存人(ぼうぎゅうぞんにん)
- 家にもどり牛のことも忘れること。
- 日常のすべてをあるがままに受け入れていった結果、悪いこだわりが消えてなくなる状態。
- 例えば、「仕事のセンスがない」などといった自分を縛る足かせをとき、何事にもとらわれない自由な心でものを見ることができる状態。
- 人牛倶忘(にんぎゅうぐぼう)
- すべてが忘れさられ、無に帰すること。
- 自分を意識しなくなる状態。悟りを得た修行者も特別な存在ではなく本来の自然な姿に気づいた状態。
- 例えば、仕事で問題があるとき、変な先入観などを持たず、問題に全く関係のない立場で客観的に考えられる状態。
- 返本還源(へんぽんげんげん)
- 原初の自然の美しさに気づくこと。
- すべてをあるがままに受け入れることが最も尊いことだと気づき、それにより周りがよく見えるようになった状態。
- 例えば、周りからの評価ばかりを気にするなど、自分のことばかり考えるのではなく、会社で自分は何をすべきか、社会にどのように貢献できるのか、といった広い観点でものごとを捉えられる状態。
- 入鄽垂手(にってんすいしゅ)
- 街に出て人に尽くすこと。
- 世の中をありのままに受け入れ、人生をかけがえのないものだと感じ、毎日を丁寧に生きる(=自分のことではなく相手のためを思って何かをする)状態。人を導く状態。
座禅が心を落ち着かせるメカニズム
- 姿勢を調えることで、深く安定した呼吸ができるようになる。
- 呼吸を安定させることによって、副交感神経を優位にして、血圧を安定させることができる。
- 座禅によって、セロトニンが産生され、それによりアルファ波が発生し、心が落ち着く。
- ※セロトニンとは、神経伝達物質の一種で、慢性的なストレスにより減少する。セロトニンが不足すると、攻撃性が高まっていわゆるキレる行動を起こしてしまったり、また神経過敏になりパニック障害やうつ病などのきっかけをつくってしまう。
座禅の方法
座禅の全体像
座禅は大きく3つのステップにわけられる。
- 調身(ちょうしん)
- 姿勢を正し、足を組み、腰を入れ、背筋を伸ばして座る。
- 調息(ちょうそく)
- 腹式呼吸で、ゆっくりと時間をかけて息を吐き、お腹がふくらむまでゆっくりと吸い込む。吐く方をより意識する。
- 調心(ちょうしん)
- 調身、調息がきちんとできると、自然と雑念が気にならなくなり、落ち着く。
このように、姿勢を調え、呼吸を調えることで、心を調えることができる。
一旦落ち着きを得るコツをつかめば、足や手を組むことなく、どこでも坐禅ができる。
座禅に適した服装
- ゆったりとした服装。
- 裸足
- 腕時計、ネクタイなど、体を締め付けるものは外す。
具体的な坐禅の組み方
- 準備
- 大きめの座布団を2枚重ね、上の一枚はお尻の下に敷くために2つ折りにする。
- 線香をたくと、部屋が清らかになり、心が落ち着くので集中力も高まる。
- グレープフルーツやレモングラスなどの柑橘系のアロマオイルを用いるのもよい。
- 合掌・低頭
- 合掌は、両手を旨の前で合わせ、指をまっすぐ天に向け、幸せな心持ちで行う。
- 低頭は、首をさげるのではなく、腰から深く曲げる。
- 座る・姿勢を整える
- 2つ折にした座布団の上に浅く腰掛け、あぐらをかく。
- 右足を左ももの上に深く乗せ、左足をその上から右ももに乗せ、両足を同じ角度で交差させる(結跏趺坐)
- 結跏趺坐が難しければ、片足だけ組む(半跏趺坐)
- 上体を前方へ倒し、お尻を思い切って突き出し、そのまま上体を起こす。これで、腰が立ち、安定した姿勢になる。
- 手は、右手のひらを上に向け、その上に左手の平を上に向けて重ねる。親指の先を合わせ、手を下腹のあたりに引き寄せる。
- 目はつぶらず、首を伸ばしてあごを引き、視線を1mくらい前方の床に落とす。
- 富士山が青空にそびえ立つような心持ちで背筋を伸ばし、下腹部の丹田(へそから6〜7cm下)に力がみなぎるイメージを持つ。
- 呼吸を整える
- 鼻呼吸が基本。鼻が詰まっている場合は、口呼吸でもよい。
- 丹田を意識して、息をゆっくり吐ききる。吐くときにお腹はへこみ、吸うときに膨らむことを意識する。
- 「ひとーつ、ふたーつ、・・・」と、1から10まで、頭の中で数えながら呼吸を行う。
- 「ひとー」で静かにゆっくり深く息を吐き、「つ」で吸う。「ふたー」で静かにゆっくり深く息を吐き、「つ」で吸う。これを繰り返す。
- 10まで数えたら、また1に戻る。
- これを坐禅の間繰り返すことに集中し、雑念を払う。なれると、息を吐く時間が少しずつ長くなる。
- 合掌・低頭
- 坐禅を終える時は、合掌し、よい時間が持てたことに感謝しながら、座ったまま軽く低頭する。
- 足をとき、よくほぐしてから立ち上がる。
- ※上記が分かりづらければ、下記を参照。
良い気を呼び込む坐禅の7か条
- 落ち着ける場所を選ぶ
- 腰を立てて座る
- 目はつぶらず、視線を落とす
- 丹田に意識をおく
- 息をゆっくり深く吐く
- 富士山になったつもりで座る
- よい時間が持てたことに感謝
効果を高めるコツ
- ゆっくり長く息を吐くことだけを意識する
- 息を吐きながら下腹の筋肉をできるだけへこませる
- 5分でもいいので毎日続ける
- できれば1回に15分以上〜30分程度行なう
座禅を体験できる場所・お寺
- その他
感想
私が行ったのは、広尾の香林院。料金は無料。毎朝7時からと日曜日の17時からの回がある。日曜日の17時に参加した。お寺に入ると、特に説明や受付などはなく、「わからないことは周りの人に聞いて下さい」とだけ書いてあった。どうすればいいかわからなくてオロオロしてると、親切な人が中に入っちゃっていいですよ、と教えてくれた。
中に入ると、座布団が二枚重ねで並んでいた。1つだけ線香が前に置いてある座布団があり、そこは和尚さんの席で、それ以外は自由に座っていいらしい。その日は20人くらいいたので結構混んでいた。
座禅は、25分行って、5分休憩、また25分。後半は、自らの意志で叩いてもらうことができる(戒める為に叩かれるのでないらしい)。
最初は結跏趺坐で行っていたが、足がしびれて集中できなかった。後半は、半跏趺坐にしてのぞんだら、痛みもなく、集中できた。
終了後は、参加者と和尚さんを囲みお茶を飲みながら談話した。座禅をおこなっているときは、とても厳かな雰囲気だったが、お茶のときは打って変わって明るい雰囲気だった。
座禅で得られる落ち着きの境地を禅定(ぜんじょう)というらしい。一度禅定を手に入れてもすぐに世の中のいろいろなことに心を乱されてしまう。ミスをして悔やんだり、叱責されて落ち込んだり。でもそれをいつまでもひきずってストレスを溜め込むと、ストレスの悪循環に陥る。「それはそれ。そこから次にどうするか」と落ち着いて今と向き合えるようになる必要がある。
座禅会に定期的に通い、また家でも実践し(やろうと思えば立ったままとか、椅子に座ってもできるらしい)、禅定をゆるぎないものにすることで、どんなことにも乱されない心の落ち着きを手に入れていきたいと思った。
参考
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仏教と脳科学―うつ病治療・セロトニンから呼吸法・坐禅、瞑想・解脱まで
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